江戸時代のお百姓さんの住宅は豊かですね。いわゆる田の字型プランと呼ばれるもので4つの部屋に土間のあるシンプルな平面である。ふすまの開け閉めで、寝室になったり、家族の団欒になったり、また客をもてなす空間になったり、また土間は玄関であり納屋であり、かまどの煮炊き以外に農作業や家畜も飼える。
家族のヒエラルキーがしっかりと存在して成立する住まいである。世田谷の岡本公園で旧長崎家の主屋を見る事ができる。どこか遠い記憶の中の世界のことではなく、建築家にしてこんな家に住みたいと思わせる趣がある。囲炉裏(いろり)にすわり、土間のかまどや黒くすすけた梁や天井を眺めていると、このような純粋な空間がつくれないのかと自問してしまう。
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個室を廊下でつなぎ合わせるパズルを解くような事をしてはならない。個室にこだわらず、空間的なアイデアを形にしたいと考えています。おおらかな家族の生活をイメージしています。お互いが侵さざるルールとマナーを守って、生活する住空間を作りたいですね。 |